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2人が付き合い始めたのは、ある夏の始まりの日だった

彼と彼女は、ひょんな事で知り合い、そしてお互い『好き』と言う感情が芽生えた

それは『偶然』のようだが『必然』の出来事・・・

2人はお互い、惹かれ合うのには、そう時間はかからなかった



夏の終わりの日に、2人は付き合う事になった

それは、意図的な事ではなく、自然の流れからそうなる『運命』だったのだと思う



夏の終わりに、2人で地元の花火大会に行った

それは、2人が付き合う様になって、初めてのデートでもあった



彼女『来年も、この花火大会に一緒に来ようね!2人の記念日にしようね』

彼『そうだな、来年もこの花火大会に一緒に来ような』

彼女『うん!約束だからね!』



花火大会が終わった後、2人はコンビニで、20本の線香花火を買った

2人は、その線香花火を10本ずつ分けて、一緒に火を点けてその煌々と光る光景を眺めた



彼女『綺麗だね』

彼『そうだな』

彼女『来年も、花火大会が終わったら、一緒に線香花火やろうね』

彼『そうだな、来年も10本ずつやろうな』

彼女『うん!約束だからね!』



2人は、この記念日と決めた日には、毎年欠かさず、この花火大会に2人で来た

彼女は、毎年この花火大会を楽しみにしていた

それは、2人の『記念日』と位置付けて、大切にしていたから



しかし彼は、逆にその『記念日』と言うモノを、そんなに重要視してなかった

むしろ、最初に2人で約束した事だから、それで毎年『義務的』にこなすと言う気持ちになっていた



数年経った頃、また夏の終わりの『記念日』である花火大会の日が近付いてきた

しかし彼はこの日、友達とカラオケに行くと言う約束をしてしまった

彼は彼女が、この『記念日』をどれだけ大切にしているのか、その気持ちを全く理解していなかった



彼女『今年も、あの花火大会に一緒に行こうね!2人の大切な記念日だから』

彼『わりぃ…その日は友達とカラオケ行くから』

彼女『えっ・・・?』

彼『その日は、2人で花火大会行けないんだよ』

彼女『どうして!?毎年欠かさずに来た2人の記念日なのに……』

彼『仕方ないだろ!?友達と約束したんだから!』

彼女『だって!1年に一度の記念日なのに……わたしこの日の花火大会を楽しみにしてたんだよ!』

彼『あのさ…記念日記念日言うけど。一体誰が記念日だって決めたんだよ!』

彼女『……わたしと同じ気持ちで居てくれてるんだと思ってたのに……』

彼『ただの花火大会だろ?別に他のもかわんねーじゃん!』

彼女『…他のと…変わらない……』

彼『それにさ、おまえとはいつも一緒に居るだろ?たかが花火大会一緒に行けないくらい、どうって事無いじゃんよ』

彼女『・・・・・』



彼女はこれ以上、何も言えなかった。

彼女自身は、1年に一度の『記念日』だと思っていた。

そして2人が付き合い始めて、初めてデートをした花火大会…

彼女は大切にしていたけど、彼はそうではなかった・・・

それどころか、そんな彼女の毎年の『記念日』と言う決め事すらも、彼は面倒だと思っている様に感じた・・・



そして、花火大会当日……彼は友達とカラオケに出掛けた。

彼女は家で、1人過ごす事になった



ふと窓を開けたら、打ち上げ花火が見えた

彼女は、今年も2人で『記念日』を過ごせると思い、その花火大会が終わった後に、いつも恒例だった線香花火を、コンビニで買っていたのを思い出した



彼女『今年はわたし1人だから……20本やらなきゃだ…』



彼女は、煌々と光る線香花火を眺めていた

いつもは1人10本だったけど、今年は1人で20本・・・



彼女『今年は……何だか長いなぁ……』



空を見上げれば、打ち上げ花火

そして、ふと手元に目を向けると、線香花火の光が見える

彼女は、15本目の線香花火に、火を点けた



彼女『……わたし、独りで何してんだろう…』



彼女の目からは、涙が溢れていた・・・

ずっと彼とは、同じ気持ちだと思っていた事、そして彼女が大切にしていた決め事を、彼はそれほど重要だと思っていなかった事



彼『ただの花火大会だろ?別に他のもかわんねーじゃん!』

彼『たかが花火大会一緒に行けないくらい、どうって事無いじゃんよ』



何より彼女は、この彼の言葉に、深く傷付いていた



彼はそれから、友達と出掛ける機会が増えた

それは、彼女と過ごす貴重な時間さえも、蔑ろにし始めた



季節は、秋の終わりになっていた

あともう少しで、クリスマスと言う季節になっていた



彼『今年のクリスマスは、何処に行こうか?』

彼女『・・・・・』

彼『…どうした?』

彼女『今年は、お友達とクリスマスやりなよ』

彼『友達はその日、彼女とデートなんだよ』

彼女『だから、予定が無いからわたしとクリスマスなんだね…』

彼『誰もそんな事言ってないだろ?それにクリスマスは、毎年一緒に過ごすって決めてただろ?』

彼女『夏の花火大会も、毎年一緒に見に行くって決めてたよ?』

彼『仕方ないだろ?約束したんだから!それにクリスマスは別だろ?』

彼女『別?わたしにとっては、どっちも大切な日だった……そんな日を、たかが花火大会とか、他とも変わらないとか言った…』

彼『まだそんな事言ってるのかよ!?』

彼女『そんな事?そんな事って言うなら、そう思えばいいよ。もう一緒に、今年のクリスマスは過ごせないから』

彼『・・・・・』

彼女『今年の線香花火、とっても綺麗だったよ。涙混じりの光が煌々と輝いて、いつも以上に綺麗で……そして一番切ない線香花火になった…』

彼『・・・・・』



彼女は、彼に対して完全に冷めてしまっていた。



その後、まもなく2人は破局した

それは、クリスマスまであと1ヶ月余りと言う、とある『秋の終わり』の日だった。






※誰かが誰かと知り合う…それは昔から決められている事なのかもしれない

それは『運命』なのかもしれない

しかしその『出会い』の運命を、その後どう育んで行くかは、その2人次第だと思う

出会いは『決められた運命』だとしても

別れは『決められた運命』ではない様な気がする



相手を大切に思う気持ち、そしてそれを如何に表現できるかで、道は良きも悪きもなるように思います。



『女心と秋の空』

こんな言葉が有りますが、今回のケースの場合、彼女の気持ちを『秋の空』の様に変化させてしまったのは、紛れもなく彼だと思います。

例え長年連れ添った2人でも、いつまでも変わらない気持ちで居られる人

短くても、すぐに冷めて破局してしまう人

理由は様々ですが、相手を大切にするかしないかで、結果は違って来る様な気がします。




あなたも、大切な人との時間を、大事にしてください。

それは、恋人や伴侶に限らず、友達や家族に対しても、同じだと思います。





大切に思う事・・・それはいつか自分自身にも返ってくる事だと思うから。。。