
とある場所に、1人の男の子が居た
男の子の名前は、たくや。
彼は、両親を幼い時に亡くしており、彼の上には、10歳以上年上の姉が居た
その姉は、弟である彼の両親代わりの存在だった
彼は唯一の姉に対して、いつもわがままばかり言っていた
そんな弟に、姉はいつも嫌な顔1つしないで、笑顔でそれを見守っていた
姉『そんな事ばっかり言ってると、女の子に嫌われちゃうぞ』
姉『さみしいんだね、大丈夫!ずっとお姉ちゃんが一緒に居てあげるからね♪』
それが、姉のいつもの口ぐせだった・・・
それから5年余りが経ち、唯一の家族である姉も、病気で亡くした・・・
それから彼は、親戚の家をたらい回しにされた
彼はどこに行っても邪魔者扱いされ続け、最後には施設に預けられる事になった・・・・・
その頃には、彼の心は既に荒んでしまっていた・・・
毎日が荒れた生活、そして辛く悲しい想いの日々が続いた
そんな彼が、唯一お気に入りの場所が有った
昔、姉と毎日の様に遊んだ小さな公園だった
姉は生前、社会人になり忙しくなってからも、彼と一緒にその公園に遊びに行く事を欠かさなかった
その公園にあるブランコに、姉と一緒に乗るのが、毎日の楽しみだった
その日も、こっそり施設を抜け出して、その公園に来ていた
いつもブランコに乗るのが日課だった
しかしその日は、既に先客が居た・・・
2つあるブランコの1つに、幼い女の子が居た
彼はいつも1人しか居ないこの公園に、しかもブランコに人が居るのに少し躊躇したが、なに食わぬ素振りで、いつもの様にブランコに腰掛けた
少し経ったくらいに、女の子が話しかけてきた
女の子『お兄ちゃんは、今何歳?』
彼『・・・・俺か?俺は15歳だよ・・・』
女の子『そっか♪あたしはね、今年で5歳になるんだぁ♪お兄ちゃんは10歳年上だね!』
彼『・・・・・』
女の子『お兄ちゃん、彼女とか居るの?』
彼(なんだこいつ・・・マセガキだな)
彼『居ないよ!俺には仲の良いヤツも居なければ、女なんてどうでも良いんだよ!』
女の子『そんな事ばっかり言ってると、女の子に嫌われちゃうぞ!』
女の子の言葉に、彼は何故か違和感を感じた・・・・・
それは、姉が生前によく言っていた言葉に似ていた
ただの偶然だと思った・・・
女の子『お兄ちゃん、何処に住んでるの?』
彼『施設だよ。』
女の子『・・・・』
彼『家族を亡くしてから、散々親戚共の家をたらい回しにされて、何処に行っても邪魔者扱い。』
女の子『・・・・・』
彼『最後には施設に無理矢理預けられて、今の有り様だよ』
女の子『・・・・・・』
彼『その施設も、今年中学卒業したら、おさらばだ♪マジでせーせーするわ!』
そう言いながら、彼はブランコから降りて、公園を去ろうとした時・・・
女の子が、彼の足にギュッとつかまった・・・・・
女の子『さみしいんだね。ずっと一緒に居てあげられなくてごめんね・・・』
彼は、その言葉に驚いた
何故なら、彼の姉がよく言っていた言葉
『さみしいんだね、大丈夫!ずっとお姉ちゃんが一緒に居てあげるからね♪』
彼はとてつもない違和感を感じた
彼『・・・その言葉・・・』
女の子は、何故か彼と姉との思い出話を語り始めた・・・
よく考えたら、姉を亡くしてから5年余り・・・
そして、この幼い女の子は今年5歳・・・
女の子はこう言った・・・
女の子『もう、新しい家族が居るから、一緒に居てあげられないけど・・・これから幸せをいっぱい掴んでほしい!辛い想いを沢山させてごめんね・・・』
彼『・・・・・』
女の子『あたし、もうお家に帰らなきゃ・・・』
彼『・・・・・』
女の子『ずっと、幸せになる事を願っているからね』
そう言い残し、女の子は公園から去ろうとした時・・・
彼『・・・お姉・・・ちゃん?』
女の子『・・・・・』
女の子は、彼に近付いた
女の子の背丈くらいに、彼もかがんだ
女の子は、彼の頭を撫でながらこう言った
女の子『ずっと一緒に居てあげられなくて、ごめんね・・・』
女の子『でもね、お姉ちゃんは、ずっとたくやの心の中で生き続けてるから・・・だから、絶対に幸せになってくれないとダメだからね!』
彼『・・・・・』
女の子『あと、女の子には優しくしてあげなさいよ!じゃないと、女の子に嫌われちゃうぞ!』
彼『・・・・・うん・・・』
女の子『バイバイたくや…お姉ちゃんは、ずっとたくやの事が大好きだったよ』
女の子は、最後にそう言い残すと、公園から去って行った・・・
彼は、気が付いたらその女の子の言葉に、知らず知らずに涙が流れていた
荒んでばかり居てはダメだ!もっと前向きに生きていかなければいけないと、心に誓った・・・・・
『輪廻』・・・信じるか信じないかは、あなた次第です。