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彼は、彼女を1人残こし、この世から旅立った・・・


それは突然の出来事だった


自分でも、その時何が起きたのか・・・




彼は気が付けば、とても綺麗な川の前に立っていた


それは、この世とあの世を挟む川・・・


いわゆる『三途の川』と言われるモノだった




そこには、一人の綺麗な女性が立っていた・・・


女性は『水先案内人』を名乗っていたが、どうもこの世の人では無いのは明らかだった




水先案内人『今日わたしが案内するのは、あなた一人の様ですね』


彼『一体・・・俺はなぜここに居るんだ?』


水先案内人『ご存知では無いのですか?』


彼『全く思い出せない・・・目が覚めたらここに居たから・・・』


水先案内人『あなたは亡くなられて、ここに居るのです。そしてわたしは、あの世へ魂を導く者・・・』


彼『・・・・・』


水先案内人『あなたは、ご自身の彼女を守る為に・・・』


彼『・・・・・』




彼は、久しぶりの休日に、彼女と出掛けていた


とある観光地に2人で出掛けていた時


2人は、とてもなかむつまじい時間を過ごした


が・・・そこに突然走ってきた車に、彼女が跳ねられそうになった時、彼はとっさに自分が身代わりになった。


それは一瞬の出来事だった・・・





水先案内人『・・・と、言う経緯です』


彼『・・・・・彼女は!?』


水先案内人『彼女は無事ですよ』


彼『・・・よかった・・・』


水先案内人『さて、あなたはその様な理由でここに来ました。今回のような理不尽な理由の場合、特例としてすぐに来世に行く事が出来るのですが・・・』


彼『来世?』


水先案内人『はい、要するに【生まれ変わり】と言うやつです』


彼『こうなったら、何処へでも連れてってくれ!』


水先案内人『最後に、あなたの願いを1つだけ叶える事になっています。もちろん生き返る等の願いは除外します』


彼『・・・彼女が無事なら、何も願いは無いよ』


水先案内人『・・・・・』


彼『・・・・やっぱり無事じゃなかったのか!?』


水先案内人『今の彼女の姿を、見てみますか?』


彼『・・・・・』


水先案内人『いや、むしろあなたには知る義務が有るでしょう。』




そう言うと、水先案内人を名乗る女性は、この世(下界)の様子を三途の川に写し出した


そこには、彼女の姿が写し出されていた。


彼女は彼を失った事により、そしてその原因が自分自身である罪悪感から、廃人の様になっていた・・・・




彼『・・・・どう言う事だよ!?』


水先案内人『あなたは彼女を守った・・・しかしこれが今の現実・・・』


彼『・・・願い事は、1つだけある・・・』


水先案内人『はい』


彼『・・・・・』


水先案内人『・・・・それは、特殊な願い事になる為、その代償は大きいですよ?』


彼『構わないさ!』


水先案内人『・・・・分かりました。』




女性がそう言うと、周りが光に包まれた。









彼女『・・・・・』


彼『・・・なにしてんだよ』


彼女『・・・・!?』


彼『・・・ただいま!』


彼女『・・・えっ!?どうして?』


彼『今から遊びに行くよ!』


彼女『・・・・うん!』




彼女は何が起こったのか分からないまま、しかし大好きな彼が自分の目の前に居ると言う事実に、信じられないが嬉しくて、彼の差しのべる手を掴んだ。




彼『デートのやり直しだな!』


彼女『うん!』


彼『お前は本当に世界一可愛いな!』


彼女『・・・恥ずかしいから、そう言う事言わないでよ!』


彼『クスッ』


彼女『クスッ』





2人は、その日1日とても楽しい時間を過ごした。


彼女は、久しぶりに満面の笑顔を見せた。


もう会うことの出来ないと思っていた愛する彼に会えた事、そんな奇跡が目の当たりに実現した事、そして最高に幸せな時間を過ごした事・・・・


しかし、そんな時間も・・・日付がかわる12時ジャストまでのモノだった・・・






彼『もう、時間だ』


彼女『・・・?』


彼『日付がかわったその時、本当のお別れだ・・・』


彼女『・・・!?』


彼『ごめんな・・・ずっと側にいてあげられなくて・・・』


彼女『・・・どうして!?イヤだよ!ずっと一緒に居てよ!!』




彼女は、楽しい1日、奇跡の1日を過ごしたが、そんな現実を突きつけられた事に、涙が止まらなかった。




彼『あのね、お前が悲しんでいると、俺は辛いんだよ。俺は・・・お前の笑顔が大好きだ!』


彼女『・・・・・』


彼『だから、もう泣かないで欲しい』


彼女『・・・・・』


彼『例え遠く離れていても、ずっとお前のすぐ側に、俺の気持ちは生き続けるから・・・』


彼女『・・・・・』


彼『ずっとずっと、愛してるから』


彼女『・・・・・』


彼『最後に、約束してくれないか?』


彼女『・・・約束?』


彼『この世に絶望しないで、自分を責めないで、今は辛いかもしれないが、無茶苦茶な事を言ってるのかもしれないが・・・』


彼女『・・・・・』


彼『・・強く、生きて欲しい。』


彼女『・・・わかった・・』


彼『よかった・・・』


彼女『・・・・・』


彼『それじゃあ・・・そろそろ行かなきゃ・・・』


彼女『わたし、絶対に忘れないから!あなたの事、ずっとずっと忘れないから!』


彼『ありがとう・・・』





そう言うと、彼は光となり彼女の前から姿を消した・・・









水先案内人『・・・・・』


彼『・・・ただいま』


水先案内人『・・・本当にこれでよかったのですか?』


彼『構わないさ、俺は何の悔いも無いよ』


水先案内人『・・・あなたは、本当に彼女を愛していたのですね。』







彼女の前に、奇跡の降臨を果たす前、彼が女性に言った願い事・・・やり取りとは・・・




水先案内人『1つだけあると言う、願い事を言ってください。』


彼『1日だけ、彼女に会わせてくれ!』


水先案内人『それは・・・いまだかつて無い、例外の願い事ですね』


彼『どうしても、今の彼女を放っておけない!』


水先案内人『・・・分かりました。しかしその例外の願い事には、それなりの代償を伴います』


彼『・・・・代償?』


水先案内人『あなたのその願いを叶える代わりに、むこう50年間、黄泉の国にて試練を受けて貰います。その願いを諦めるなら、あなたは今すぐ来世に行く事が出来るのですが・・・』


彼『黄泉の国って、地獄の事か!?』


水先案内人『違います。正確に言えば、最後の審判を受ける前に訪れる、試練の場所です。もちろん、あなたは最後の審判を受けることも無ければ、地獄に落ちる事もありません。来世に行く事は決まっていますから。しかし黄泉の国での生活は、辛いモノになります。』


彼『構わないさ!今、愛する彼女が悲しんでいる。何もかも絶望に覆い包まれている。そんな姿を見て、俺は来世には行けない!』


水先案内人『・・・・わたしには、理解出来ない・・・私は水先案内人・・・しかしそんなわたしには、人間の心が解らない・・・』


彼『それが人間なんだよ。愛する者、守るべきモノの為なら、どんな辛い試練にも挑む!それが人間なんだよ。』


水先案内人『・・・・・』






彼は、何も苦労しないで『来世』に行く事より、たとえ50年の長い試練を選んででも、彼女に1日だけ再会した事・・・


彼の気持ちとは、如何なるモノだったのか・・・


『来世』へすぐに行ける選択を選ばず、『黄泉の国』に行く試練を敢えて選んでまで、彼女に取り戻して欲しかったモノ・・・





『笑顔』




この1つの彼女の表情を取り戻す為の『願い事の代償』は、とても大きすぎたかもしれない。


しかし彼は、その『代償』など、彼女の笑顔に比べたら、大した事のない事だと思っていた。




あなたにとって、本当に大切なモノとは何ですか?

お金、地位、名誉・・・そして自らの幸福・・・

人それぞれ生き方、考え方は違います。

ただ、そこに心から『愛する』者が居れば、その価値観も違うでしょう。



うわべだけの愛情、友情の場合、おそらくは自らを優先してしまう・・・

それが『人間』・・・



しかし、心から想う者・・・

心から護るべき人が居たら、変わって来るのだと思う・・・

それも『人間』・・・